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ミトコンドリアの秘密(第三話)

 日本では、多くの場合、女性は結婚後に夫の姓を名乗ります。その家に男の子が生まれれば、その姓は受け継がれていき、男の子が生まれなければ、その家系が途絶えてしまうこともあります。しかしながら、ミトコンドリアに注目してみますと、話は正反対なのです。

 子供は父親と母親の遺伝子を半分ずつ受け継ぎます。この遺伝子というのは、細胞の核の中に入っているDNAです。精子と卵子は半人前の細胞で、どちらもDNAを半分しか持っていませんが、半人前の精子と卵子が受精すると、父親と母親のDNAを半分ずつもった一人前の細胞(受精卵)が出来上がり、新しい生命が誕生します。

 さて、親から子へと受け継がれていくのは、核の中のDNAだけではありません。以前、ミトコンドリアは独自のDNAを持っているという話をしましたが、このミトコンドリアのDNAも、親から子へと受け継がれていきます。ただし、父親と母親から半分ずつではありません。母親からだけなのです。
ミトコンドリアの秘密(第三話)_c0208671_2593484.jpg

 ミトコンドリアDNAは母親から子供へと受け継がれていくわけですが、その家に男の子ばかりが生まれ、女の子が生まれなければ、その家のミトコンドリアDNAはその代で途絶えてしまいます。逆に、女の子を一人でも授かっている限りは、その家のミトコンドリアDNAは末代まで受け継がれていきます。

 ミトコンドリアDNAを調べれば、家系をさかのぼって追跡していくこともできます。世界中のいろいろな人種の母系先祖をたどってみると、10-20万年前の一人のアフリカの女性に辿り着く、という研究結果も報告されています。「今を生きる全人類の共通の母」とも言える人で、「ミトコンドリア・イブ」というふうにも呼ばれています。彼女は長い歴史にわたって女系が絶えることのなかった、ある意味「幸運な」女性なのかもしれません。


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   私たちの共通の母親って…どんな方だったのでしょうか?

# by dreamwhile | 2010-07-18 03:05  

ミトコンドリアの秘密(第二話)

 いつまでも健康で長生きしたい。この究極の願いをかなえてくれるのは、神様でしょうか?仏様でしょうか?それともミトコンドリア様でしょうか?

ミトコンドリアの秘密(第二話)_c0208671_2359069.jpg

 前回お話しましたように、ミトコンドリアは私たちの細胞の中の「発電所」です。糖分や脂肪分を燃やしてエネルギーを作り出しています。性能も良く、安全性も高いと評判の発電所ですが、完璧ではありません。過重労働をしいられると、有害な物質が漏れ出てくることもあるのです。例えば、「活性酸素」と呼ばれる分子が漏れ出てくると、私たちの細胞を傷つけ、老化を進めてしまいます。

 では、どうすればこの危険を回避し、長生きすることができるでしょうか?ミトコンドリア発電所の数を減らすべきでしょうか?

 どうやら、答えはその逆のようです。ミトコンドリア発電所の数を増やすことが、長生きするための秘訣のようなのです。高性能のミトコンドリアの数を増やすと、ミトコンドリア一個あたりの負担を減らすことができます。負担が減ると、理想的な条件下で糖分や脂肪分を燃やすことができるようになり、有害物質の漏出を最小限にできるのです。

 以前、「腹八分に食事制限すれば、長生きできるかもしれない」という話をしました。カロリー制限をするとミトコンドリアの数が増え、それによって寿命が延びるのではないかと考えられています。また、レスベラトロールという赤ワインの成分も、ミトコンドリアの数を増やす作用があり、それによって寿命を延ばすことができるかもしれないと考えられています。

 どうやら、ミトコンドリアは単なる居候ではないようですね。私たちの細胞の中に迷い込んできた、神の使いなのかもしれません…


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# by dreamwhile | 2010-07-13 00:00  

ミトコンドリアの秘密(第一話)

 ミトコンドリアって覚えてます?昔、理科の授業で習った、ウインナーソーセージみたいな形をしたアレです。今回から数回にわたっては、ミトコンドリアの秘密を紐解いていこうと思います。実は彼、なかなかユニークな履歴の持ち主なのです。
ミトコンドリアの秘密(第一話)_c0208671_11115146.jpg

 ミトコンドリアは細胞の中にある小さな器官ですが、とても重要な任務を担っています。その任務というのは、エネルギーを作り出すことです。ミトコンドリアは、糖や脂肪を燃やしてエネルギーを作り出す、「火力発電所」なのです。糖や脂肪を燃焼させる時には、酸素が必要になります。私たちがいつもいつも息をしているのは、ミトコンドリアに酸素を使ってもらうためであり、ご飯を食べているのは、それを原料にしてミトコンドリアにエネルギーを作り出してもらうためなのです。

 このように、ミトコンドリアは私たちの体にとって必要不可欠な存在ですが、もともとは細胞の中に迷い込んできた居候でした。ミトコンドリアの祖先は、一人暮らしをしていた細菌なのですが、私たちの祖先の細胞の中に迷い込んだところ、そこは思った以上に居心地がよく、またその細胞にとってみても、働き者のミトコンドリアにいてもらえると活動の場を広げることができたため、お互いの利害関係が一致して共同生活が始まったのです。

 私たちの遺伝情報は、DNAという形で、細胞の核の中に保存されています。そして、細胞が分裂する時には、そのDNAが正確にコピーされ、二つの細胞がDNAを一式ずつ引き受けます。一方、ミトコンドリアの遺伝情報は、基本的にはミトコンドリア自身が保存していて、ミトコンドリアが分裂する時に、やはりコピーされる仕組みになっています。ミトコンドリアが独立した生物だったころの名残りだろうと考えられます。

 次回は、ミトコンドリアと「長寿」の関係を探ってみたいと思います。お楽しみに。


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# by dreamwhile | 2010-07-05 11:16  

脳卒中にならないために…

 寝たきりになってしまう最大の原因は脳卒中です。寝たきりにならないためにも、脳卒中を予防することはとても大事なことです。そこで、今回は、脳卒中にならないためにはどうすればよいか、総括してみたいと思います。

 脳卒中を引き起こす原因としては、

①高血圧
②動脈硬化
③心房細動

の3つが重要です。これらの3つを予防もしくは治療できれば、脳卒中になる確率を減らすことができます。

①高血圧
脳卒中にならないために…_c0208671_4344824.jpg 高血圧の予防と治療で一番大切なのは、「減塩」です。日本人は一日平均12gの食塩を摂取していますが、健康のためには一日10g以下、高血圧治療のためには6g以下が望ましいと考えられています。つまり、塩分を今の半分にしましょう、ということです。これは簡単なことではありません。私たちの体は、塩を摂取するのが難しかった時代の名残りで、「塩分=美味しい=積極的に体に取り込もう」という仕組みになっています。そのため、「塩分のない食事=美味しくない」と感じてしまうのです。しかしながら、食事は習慣なので、減塩の工夫をし、それに慣れていけば、この目標値も決して無理な数字ではありません。
 減塩だけでは十分に血圧を下げることができない場合、特に血圧が160以上あるような場合は、ぜひとも医療機関を受診してください。血圧が高くても、痛くもかゆくもないでしょうが、将来的に脳卒中にならないためには、治療を受けるのが得策です。

②動脈硬化
脳卒中にならないために…_c0208671_4352719.jpg 動脈硬化というのは、血管の老化です。年をとるにつれ血管が老化していくのは、ある意味仕方のないことですが、老化のスピードを遅らせる努力は大切です。血液中のコレステロール値が高かったり、血糖値が高かったりすると、血管の老化は早く進みますので、まずはこれらの要因を取り除くことが大切です。腹八分を心掛け、コレステロールをとり過ぎないこと、カロリーをとり過ぎないことが重要です。それでもコレステロール値が高かったり、血糖値が高かったりする場合には、薬の力を借りる必要があります。

③心房細動
 心房細動については前回お話しました。年齢を重ねるごとに心房細動になる確率は高くなり、これを完全に予防することはできませんが、たとえ心房細動になったとしても、早期発見早期治療を心掛ければ、脳卒中になる確率は減らせます。時々、自分の脈を触れてみて、規則正しいリズムを刻んでいるかどうかチェックしてみてください。


 男性、高齢者、喫煙者、大酒のみは脳卒中になりやすいですので、特に注意してください。皆様の健康をお祈りしています!


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# by dreamwhile | 2010-06-26 04:38  

心臓の弾丸が脳に飛ぶ

 前回、「心房細動ってどんな病気?」という話をしました。今回は、心房細動になるとどうして脳梗塞になってしまうのか?脳梗塞にならないためにはどうしたらいいのか?考えてみたいと思います。

 心房細動というのは、読んで字のごとく、心房が細かく動く病気です。では、細かく動くのは良いことでしょうか?
心臓の弾丸が脳に飛ぶ_c0208671_1232846.jpg

 …実は、その逆なんです。トイレの水を流すのに、レバーを何度もガチャガチャと細かく動かした場合、ほとんど水は流れてくれません。心房が細かく動く場合も同じで、心房から心室に効率的に血液を送ることができなくなってしまうのです。


 そうなると、心房の中で、血液がよどんでしまいます。血液は流れている時には固まりにくいのですが、流れが止まると固まりやすくなってしまうのです。

 こうして、心房の中に血液の固まりができてしまうわけですが、この固まりは心房の中にある限りは、あまり大きな問題になりません。というのも、心房には十分なスペースがあるので、よほど大きな固まりができない限り、それが心房の邪魔をすることはないのです。

 ところが、もし、この血液の固まりの一部がちぎれて心室に流れていき、そこからさらに全身へと送り出されてしまったとしたら…大惨事になりかねません。十分なスペースのある心房とは異なり、血管は次第に次第に細くなっていきますので、この血液の固まりが血管をつまらせてしまうのです。特に、私たちの体の司令塔である脳の血管がつまってしまった場合、その被害は甚大なものとなってしまいます(これが脳梗塞です)。困ったことに、血管の走行パターンを見てみると、心臓で作られた弾丸は、脳の方向へ飛んでいきやすいのです。
心臓の弾丸が脳に飛ぶ_c0208671_11571272.jpg


 では、脳梗塞にならないためにはどうすればよいのでしょうか?

 まず、心房細動にならないことが大切です。心臓の病気や甲状腺(こうじょうせん)の病気などがあると、心房細動になりやすく、そのような持病がある方は、きちんと治療を受けることが重要です。では、そういった持病がなければ安心かというと、そうではありません。年齢を重ねるごとに心房細動になってしまう確率は高くなり、60代では約100人に1人、70代では50人に1人、80代になると30人に1人が心房細動になってしまいます。

 老化にともなう心房細動は、防ごうと思ってもなかなか防げませんので、このような場合には、早期発見、早期治療が大切です。胸がドキドキしたり、息切れがしたり、といった症状を自覚される方もいますが、ほとんど症状を感じない方もいらっしゃいますので、早期発見のためには、自分で自分の脈を触れてみることをお勧めします。健康であれば、規則正しい脈を感じるはずです。もし、自分の脈が不規則だと感じたら、ぜひとも医療機関を受診してみてください。心配のいらない不整脈の場合もありますが、治療が必要な場合もあります。

 自分の脈を触れてみる。それほど難しいことではないと思います。自分自身の体をいたわるためにも、時々チェックしてみてください。


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   健康でいられることが何より一番ですね♪

# by dreamwhile | 2010-06-19 12:07