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昆布のダシと炎症

 「昆布が海の中でダシがでないのなんでだろ~」
 赤と青のジャージを着た芸人さんをふと思い出します。数年前の流行語大賞にもなりました。

 今回は、この謎を解明するところから話を始めたいと思います。
昆布のダシと炎症_c0208671_7173746.jpg

 人間と昆布。動物と植物という違いこそありますが、どちらも、たくさんの細胞からなる生物です。どちらも、細胞一つ一つは袋のようなもので包まれていて、細胞の中と外とが仕切られています。そして、細胞の中では、絶えず、古いものが壊されては新しいものが作られ、「生の営み」が行われています。昆布のうまみ成分であるグルタミン酸は、昆布の細胞の中でつくられるのですが、細胞が生きている限り、通常、細胞の中のものが勝手に外に出ていくことはありません。なので、海の中では、ダシ成分は昆布の細胞の中に閉じこもったままなのです。ところが、細胞が死んでしまうと、細胞の中と外とを仕切っていた袋もこわれてしまい、細胞の中のものが外へと散らばっていきます。こうして、クツクツと煮立った鍋の中では、鍋いっぱいに昆布のダシが広がっていくこととなるのです。

 さて、以前、「炎症ってなに?」という話をしたことがありました。
お読みになっていない方や内容をお忘れになった方は、上のリンクをクリックして、そちらをお読みになると、この後の話がわかりやすいと思います。

昆布のダシと炎症_c0208671_7184561.jpg 炎症というのは、「ピンチをきりぬけるための行動パターン」です。前回は、細菌やウイルスなどが攻め込んでくる状況、いわゆる「感染」をテーマにお話ししましたが、炎症が起こるのは何も感染の時だけではありません。「ねんざ」した時、「やけど」した時、野球のピッチャーが肩を使い過ぎた時、などにも炎症が起こります。これらに共通するのは、「細胞が負傷している」ということで、細胞が負傷すると炎症が起こるのです。

皆さんは「ある国がピンチに陥っている」と聞くと、どんな状況を思い描くでしょうか。
別の国に攻め込まれて戦争状態にある…とか、
大地震や大津波などの自然災害が起こって壊滅状態にある…とか。

 このようなピンチの時の行動パターンというのは、ある程度決まっていて、ピンチに陥っている場所に向けて、自衛隊などの「人」が派遣され、救援物資などの「物」が運び込まれます。そうやって、状況を立て直そうとするのです。実は、私たちの体の中でも同じようなことが起こっていて、細菌やウイルスなどに攻め込まれて戦争状態にある場合も、細胞が負傷して壊滅状態にある場合も、その場所に向けて、「白血球」が派遣され、「血液中のタンパク質」が送り届けられ、ピンチを切り抜けようとするのです。

 ピンチを最初に発見するのは「おまわりさん」です。このおまわりさんは、マクロファージという名前の白血球です。マクロファージは、「ヒトの細胞ではない生命体」を発見した場合、「感染だ!」、「ピンチだ!!!」、と援軍を呼びます。また、「負傷した細胞」を発見した場合にも、「仲間がやられている!」、「ピンチだ!!!」、と援軍を呼ぶのです。

 では、マクロファージは「仲間がやられている」ってことを、どうやって知るのでしょうか?もちろん、マクロファージには目がありませんので、「仲間がやられている」ことを目で見て発見することはできません…
 実は、マクロファージの表面にはセンサーがついていて、このセンサーが「昆布のダシ」を感知することで、仲間が負傷していることを認識するのです。正確には、昆布のダシとは違う成分を感知しているのですが、昆布のダシと同じように、細胞の中にあるべきものが外に出てきていると、「これは大変だ!!!」ということになるんです。

 あるべき物があるべき場所にある、というのは大事なことです。そして、あるべきでない物がそこにある、というのは、私たちの体にとっては緊急事態なんです。


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by dreamwhile | 2009-10-04 07:30  

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